大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和50年(ネ)2221号 判決 1976年5月07日

控訴人

楠見恭子

右訴訟代理人

奥中克治

被控訴人

株式会社京都相互銀行

右代表者

笠松斉

右訴訟代理人

北村巌

外三名

主文

本件控訴を却下する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一被控訴人勝訴の原判決が、控訴人に昭和五〇年一〇月二四日、分離前相控訴人楠見一人に同年一一月七日各送達され、右両名が同年一一月二〇日控訴を提起した事実は、記録上明白である。

二1  本件のように、建物の所有者(競落人)甲が、その所有権に基づいて、建物の共同占有者(共同賃借人)乙、丙に対し、建物の明渡を請求する訴訟は、いわゆる固有必要的共同訴訟ではないと解すべきである(消極説)。けだし、右の場合は、(一)建物共同占有者が、実体法上単独で、建物を占有する各自の利益を放棄し、共同占有する建物全部を明渡すべき各自の義務を承認することができる場合であり、(二)積極説を採るべき特別の事情は認められず、右(一)のゆえに、消極説の結論が妥当である場合であるからである。「土地の所有者がその所有権に基づいて地上の建物の所有者である共同相続人を相手方とし、建物収去土地明渡を請求する訴訟は、いわゆる固有必要的共同訴訟ではない。」と判示する最高裁判所昭和四三年三月一五日第二小法廷判決、民集二二巻三号六〇七頁の積極説と消極説の結論の比較についての判示部分参照。

2  右1の訴訟はいわゆる類似必要的共同訴訟ではないと解すべきである(消極説)。けだし、右の場合は、(一)共同訴訟人のうちの一人が仮に単独で訴訟をしたときでも、その判決の効力が他の共同訴訟人と相手方との間に拡張される場合でなく、(二)右1の(一)及び(二)と同じ場合であるからである。

三従つて、右共同訴訟における甲勝訴の判決に対し、乙が上訴することなく、乙について上訴期間が経過したとき、丙について上訴期間が経過していなくても、右判決は乙敗訴部分について確定する。

控訴期間経過後の本件控訴は不適法である。

四よつて、本件控訴を却下し、控訴費用の負担について民訴法九五条・八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(小西勝 入江教夫 和田功)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例